夢と灯火

身辺雑記, etc. 主に気に入った音楽や漫画についての感想

2015-01-01から1年間の記事一覧

空駆ける自由は誰のものか:湯川潮音の歌詞について

初期楽曲から「かかとを鳴らそ」まで 湯川潮音の初期楽曲を聴くと、「飛翔」というモティーフの執拗な反復ぶりに驚かされずにはいられない。 たとえば、代表曲「渡り鳥の三つのトラッド」では「極上の羽飾りのコートをまとって」みっつの季節の面影へと吸い…

光の雨:Fairground Attraction の Moon on the rain について

試訳 地下のバーに鳴り響くジャズ、雨の日*1に月は出ている飲み過ぎ、遣いすぎ、またすっからかんねああ愛しのひと、今夜はどこにいるの思い出す、よくテムズのほとりを歩いたこと堤防の明かりが宝石の鎖みたいだったはじめのころあなたがいったことを忘れな…

抱擁の孤独:川本真琴の「微熱」メモ

川本真琴の「微熱」という曲が好きだ。 川本真琴の歌詞は、しばしば身体と身体とが触れ合う瞬間をめぐってつむがれている。たとえば「背中に耳をぴたっとつけて 抱きしめた」という歌い出しから始まって、「唇と唇 瞳と瞳と 手と手」「2コの心臓がくっつい…

卒業の雪景色:YUKIの「ふがいないや」について

謎めいたリフレインの意味 ハチミツとクローバーIIの主題歌として有名になったYUKIの「ふがいないや」は、ぼくのなかで長いことその不思議な魅力を保ち続けてきた。ふがいないやという詠嘆からつづけて放たれる「いやー、いやー」というサビの力強さに、どう…

「窓」と「軒先」:高浜寛『蝶のみちゆき』感想ノート

高浜寛の『蝶のみちゆき』を読んだ。思えば何年か前に、異邦の地で肩の凝らずに読めるものを探していて、ふと電子書籍で出ていた『トゥー・エスプレッソ』を買ったのがこの作家とのはじめての出逢いであった。いっけんノンシャランとうつる筆遣いと物語の気…

冬の蛍:須藤まゆみの「蛍火」について

「蛍火」はデレマスの北条加蓮によるカヴァーを聞いて以来、大好きな曲のひとつなのだけれど、タイトルの「蛍火」という語にずっとひっかかりを覚えていた。 なるほど調べてみると、蛍火というのは俳句の季語のひとつで、蛍の光のことであるという。蛍は夏の…